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第二十九話 雨音に消えた嘘

Author: 白蛇
last update publish date: 2026-08-08 17:02:32

 その夜、夢の中で、凜りんは見知った家に立っていた。

 冷たい大理石の圧迫感は消え去り、足裏には古びて軋きしむ畳の感触がある。空調の効いたタワーマンションの無機質な空気は、いつの間にかひどく湿って重苦しい、古い藺草いぐさと雨の匂いにすり替わっていた。

 ――ここは……。

 視線を巡らせ気付いた瞬間、全身の血の気が引いた。

 京都・上京区。まだ名家の体裁を保っていた頃の、白鳥家の豪邸ごうていの自室。決して戻りたくなかった場所。

 雨戸が閉じられた格子窓の向こうから、ざあざあと激しい雨の音が聞こえる。

 握り締めていたスマートフォンに気付く。電源ボタンに触れても、画面は反応しない。長押ししても、沈黙したままだった。

 襖ふすまの向こうから、衣擦れの音と、チッという苛立いらだたしげな舌打ちが近付いてきた。

 凜ははっとして振り返る。

「あんた、あの男とは別れたって言うたよな? また嘘吐うそついたんか? ええ加減にしな
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